深夜の
階段の 踊り場
暗闇に浮かぶのは
裸体の老婆
あの時 私は
妖怪を見た
と思った
その時の衝撃を 伝えよう と
今回
マンガを描いたんだけど…
残念ながら 私には
それを伝えるだけの
画力が なかった
それでも
5秒後に
それが 妖怪ではなく
自分の母親だった という
脱力するようなおかしさは
少しは 伝えられただろうか
最近の母は
夢を見る時
まるで 起きているかのように
ハッキリと言葉に出す事が
多くなっている
まるで リアルに
そこにいる誰かと 話しているようで
誰かいるのか と
母の部屋に
様子を見に行くことも あるくらい
でも 本人は
ベッドの中で スヤスヤと寝ていて
私は いつも
狐につままれたような気分になる
そんな 母の 不思議行動が
ここにきて また
進化(?)してきている
喋るだけでなく
実際 ベッドから起き上がり
私の部屋にやってきて
さっきまでいた 男の人は
もう帰ったの?
と聞いたり
お母さんが心配するから
私 早く お家に帰らなくちゃ
とコートを羽織って
帰り支度を始めたり
多分 その時は
夢と現実の境が 混沌として
区別がつかなくなっているのだろう
そして 先日は
私から お風呂に入るように
言われたのに(←妄想)
お湯が入っていなかったので
M子どういうこと!?
と 素っ裸で 私に
文句を垂れまくったのだった
まあ この話は
家の中で 完結しているから
衝撃は大きかったけど
大きな問題には ならなかった
ところが
その 数日後
近所のスーパーに
10分で戻るから
と言い含め
卵を買いに 出かけた時のこと
言い含めたことが
必ずしも
母の記憶に留まる とは限らない
と思ってはいたけど
10分程度の外出中に
なにか おかしなことを
しでかす可能性は
限りなく ゼロに近いだろう
私は そう考えていた
今までが そうだったから
だけど
スーパーで買い物を終えた 私は
出入り口のところで
母に 出くわしたのだった
どうしたの お母さん
10分で戻る って言ったじゃない
しかも 冬なのに
コートも着ないで
そう言う 私の心臓は
バクバクだった
今 ここで 母と偶然出会えたから
良かったけど
母とすれ違う可能性は 十分あった
そうしたら 母は
私を探し
街をさまよったに違いない
既のところで 徘徊を回避できたけど
もう 母をひとりにはできない
強く そう思う
出来事だった
我が家の
50年近く使っていた
玄関扉の 歪みが
とうとう 限界を超えたので
今月
玄関の扉と ついでに窓ガラスも
セキュリティのしっかりした
新しいものに 入れ替えた
この玄関扉は 2重ロック以外に
もう一つ 内側からかける
ちょっと複雑な手順の
安全装置がついているのが
ウリで
私は 最初
先日の スーパー事件があったので
複雑だということは
母も むやみに
玄関を開けられない
母の徘徊防止に 役に立つ
そう思って 喜んでいた
でも
その時
納入業者に 言われた
奥さん(←私のこと)の 外出中
家に お母さんがひとりでいて
鍵のあたりを 触った拍子に
この装置が オンになった時
お母さんに 解除するように言ったら
できますか?
えっ
突然の質問に
私は 不安になった
もし できなかったら…?
私の言葉に
業者は 厳かに答えた
その時は
窓か 扉を 破壊して入るしか
ないです
実際 認知症の家族がいるご家庭で
設置した 数日後に
扉を破壊せざるを得なかったケース
ありましたからね~
その話を聞いて
私は悩んだ
悩んだけど
結局
内側からかける 安全装置は
取り外してもらった
残念だったけど
想像の斜め上を行く 母の行動に
対応するには
思いつくことは すべてやっておかないと
後で 後悔する
これは 私が
母の介護をする中で 学んだことだ
もちろん そうしたところで
現実に
対応しきれないことは
あるだろう
母が
私の 思ってもみない方法で
思ってもみない行動に出る
可能性は
十分に ある
その時は
潔く
現実を 受け入れるしかないけれど
ただ
受け入れるにしても
願わくば
ああ また お母さんに
やられちゃったな
そう言って
今回の 妖怪事件のように
最後
くすっと笑って 終えられたら
いいんだけど
そうしたら 私
また もう少し
頑張れる